「芹香、お前はお母さんと一緒にいてやれ。葬式にはお父さん1人で行く」


同じ目にあって、同じように辛いはずなのに、お父さんはそう言った。


「もう少し落ち着いてから、改めてお礼に行こう」


「そうだね……。ありがとう、お父さん」


あたしは、ホッとしてそう答えた。


颯真お兄ちゃんが他の人を助けるために崖に下りて行ったのは、あたしの責任だ。


あたしが両親を助け出したから、ほかの人も助けられると考えて下りて行ったんだと思う。


そんな颯真お兄ちゃんの写真を、今は見れそうになかった……。