その日、携帯電話に時間を取られてしまったあたしは遅刻寸前で学校についた。


息を切らしながら教室へ入ると、席に座っている和花がふりむいて「セーフ」と言った。


あたしはふぅと大きく息を吐き出し、和花の後ろの席に座る。


それとほぼ同時に、担任の若い男教師が入って来た。


「芹香がこんなギリギリに来るなんて、珍しいじゃん」


ホームルームの話をろくに聞かず、前を向いたままの和花がそっと話かけてくる。


「ちょっと、携帯の調子が悪くってさぁ」


あたしは和花の背中に向かってそう答えた。