ジュウガツムイカ。

今日も私は
キーホルダーを握りしめる。

お父さんの仕事の都合で
新たな地へひっこしてきました。
自然がたくさんあり素敵なとこです。
ただ、家の近くにがけがあるのが
少しこわいな…。

新しい学校に馴染めるでしょうか。

友達は出来るでしょうか。

給食はおいしいでしょうか。

先生はタバコ臭くないでしょうか。

不安なことがたくさんあるけど
なんとなくやっていけそうな
気がするの。

でも。これだけはお願いします。

「給食がおいしい学校でありますように…」

キーホルダーを握りしめながら祈るように呟く。

…このキーホルダーとも長い付き合いになるな。ハートを2つに割った形で、もう片方を持っている人とくっつけるとハートの形になる。
いわゆるペアキーホルダーだ。
誰がもう片方を持ってるかって?
もう片方を持っている人は…

この世にいない。

あ。ごめん。誤解したら悪いけど死んじゃったってことじゃないよ。

最初から片方しかなかったの。
買ってきたお父さんが言ってた。

「ペアキーホルダーなのに片方しかない不良品だから安かったんだよ!
かわいいし尋歌は気に入ってくれると思って買ってきたんだ!」

うん。私のお父さんは少しずれてる。
確かにかわいい。
でも。
ペアにならないペアキーホルダーってなに?
しかもハートが2つに割れてるなんて
失恋してるみたいじゃん…

でも捨てる気にもなれなくて。というより…

捨ててはいけない気がして。

このキーホルダーがないと心細いというか。

さみしいというか。

そしていつのまにか常に握るようになった。

多分十年前位から。
でもハッキリは思い出せない。
思い出そうとすればするほど
わかんなくて。
なんでだろ?

ああ。ごめん。ちょっとしゃべりすぎちゃった。
じゃあ。

「いってきまーす」

いつもより少しだけ 大きな声で。

いつもより少しだけ背筋をのばして歩いてみた。