早く恐怖をとりはらいたい。

そう思った愛子は気持ちを切り替えようと

洗面所に向かい顔を洗おうとした。

蛇口をひねり、手で水をすくった時だった。

「熱い!」

愛子の叫び声は家じゅうに聞こえた。

「どうしたの?」

すばやく駆けつけてきた母の問いに

愛子は興奮して答えた。

「蛇口から熱湯が出てきたの。」

「おかしいわね。普段から熱湯を使うことはないのに。」

幸い、火傷の心配はなかった。

なんと気味の悪いことか。

さっさと学校へ行って

とりあえず今までのことは忘れようと、

愛子はいつもより早く家を出たのだった。