「こんな感じかな..。」

鏡を見ながらメイクをして、時計を見ると8時50分。

「やばっ急がなきゃ!!」

私は急ぎめで、鞄とクッキーを入れた袋を持って家を出た。



「あっぶなぁ~。」

私が駅に着いたすぐに電車が来た。

ガシャン

電車に乗って、目があう。

「優!おはよ。」

「おはよ、みずき。ぷふっ!お前、急いで来ただろ?髪の毛、グシャってなってるぞ。」

「えっ!?嘘!どこ!?」

「こーこ!ほれっ。」

慌てて頭を触る私に、優は笑いながら髪を直してくれた。

「あ、りがと..。」

優の笑顔を見ているだけで、幸せになれることを私はこのとき実感した。

それから私たちは、電車に揺られながら遊園地を目指した。


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「うわぁ~!!優っ!見て、あそこ!かわいい~!!」

「おい!みずき!そんな走ったらこけるぞ!」

遊園地に入ってすぐ、私はウサギの着ぐるみを見つけて走った。

優の声は聞こえていたけど、楽しくて止まれなかった。

「ったく...バカだな。」

だからそう言った優の言葉を、私は知らない。


しばらく遊んだ時、今度は優が声を張り上げた。

「みずきっ!次は、あれ乗ろうぜ!!」

「....!?」

優が指さした方を見たとき、私は言葉を失った。

それは、どうみても失神してしまいそうなジェットコースターだった。

「なっ?乗ろうぜ!」

「で、でもあのジェットコースター...すっごく高いし、なんか一回転するっぽいし...」

"だから、私は無理!"と断ろうとしたとき、優が寂しそうな顔をした。

「あ...。」

[よく考えてみたら、さっきから私が乗りたいやつばかり乗ってる...。よっし!]

「わかった!優、乗ろっか!」

「えっ!いいの!?」

「うん!」

私が大きくうなづくと、優は"やったぁ"と言って笑った。

その笑顔が見たかった私も、ちょっと嬉しかったりする。

「じゃあ、行こっ!」

「...!!」

突然、優が私の手を取ってきた。

驚いてる私をよそに、優はジェットコースターに向かって走りだす。

手を引かれながら私は、

[前にもこんなことあったな..]

と考えていた。

あの時と同じ、優しい背中。

それだけのことが、今の私には、大切な宝物だと思えたんだ。