「結局僕らをダブルデートに誘った日以来会わなかったね。何してたの咲夜」


「別に。仕事とか忙しかったんだよ」


「本当?塾だよね?早く終わるんじゃないの?教師とは違うんだし」



僕の言葉には自然に棘が混じっていた。


咲夜がどうして学校の先生ではなく塾の講師になったのか僕は知っているのに。

なのにあえてこんな話題を持ちかけた。



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「もしもし?咲夜!受かったよ!!東大!!」


『いきなりだな。・・・そうか、やりたいこと見つけたんだな。良かった』


「うん!!ようやくこれでひなに会える。やっとだ・・・」


『おめでとう。東大か・・・。相変わらずお前はすごいな』


「必死に勉強したからね!あっ咲夜は?確か教員免許とるために大学行くんだよね?東京出てきたりするの?」


『いや・・・それはやめたよ。俺、塾の講師になる』


「え?」


『高校卒でも俺くらいの頭なら講師に入れてくれるっていう塾が近くにあってさ』


「何言ってるんだよ。塾の講師になるくらいなら教師になった方がいいじゃん!」


『俺この町が好きなんだ』


「・・・そんなこと分かってるよ。でも、それとこれとは別だよ。夢叶えてから戻ってきたって!」


『ああ。今さっきまでのは言い訳。本当は俺、志望校落ちたんだ』


「え・・・」


『理由は簡単だ。受験当日に熱出して、試験受けれる状態じゃなかった。体調管理もままならないんだ。教師になるなっていう神様からのお告げだよこれは』


「何言ってんの咲夜。別にその大学じゃなくったって今からでもいける大学は・・・」


『俺んちさ。太陽の家と違って金ないんだよ』


「・・・」


『ごめん。嫌みな言い方だったよな。・・・今日は用事あるから、またな』



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