「染谷の好きな場所でいいよ」


「じゃあ決まり!!あそこね!」


「あそこ?」


「ほら!やっぱり聞いてなかった!!遊園地だよ遊園地!!隣町の!」


「ああ、あそこか。でもどうやって行くんだよ。電車か?」


「え?先生車持ってないの?」


「持ってるけど。最近ちょっと遠くに行くときはバイクだから車乗ってないんだよ」


「じゃあ運転のリハビリということで!♪」


「・・・分かった分かった」





染谷と話していても、頭によぎるのはひなたのことばかり。


いや、何をしていてもだ。




もう末期なほどに。



「先生」


「なんだ」


「私のこと、あの二人の前では楓って呼んでくれませんか?」


「・・・染谷は急に敬語になるよな。調子が狂う」


「えへへ。そんな先生が見てみたいから、とか言ってみたり笑」


「なんだよそれ。・・・分かったよ」


「やった!!!」


「悪いな。嘘に付き合わせて」


「いいの。私が好きで嘘ついてるんだし!」





俺はひなたを忘れられる時はくるんだろうか。
末期のガンのように、治らないものなんじゃないかと思っているから無理だとは思うけど。

でももし、染谷とずっと一緒にいれば忘れられるのだろうか。


染谷という特効薬は効く日がくるのか。





「ありがとな」


表では冷静を装っている俺の心の中はぐちゃぐちゃだ。