「俺は・・・受け入れられない」


自分が嘘をついたくせに、染谷からの告白を断った。

断れば嘘なんて簡単に崩れ去ってしまうのに。



でも、やっぱりひなたの代わりに想いを受け取るなんて事できるはずない。



「いいよ。それでもいい。先生の嘘に付き合うだけでもいいから」


「・・・染谷」


俺にすがるように染谷は言った。

こいつはひなたの代わりになる事を深く望んでいる。



「抱きしめてくれなくてもいい。キスもいらない。ただ隣にいるだけでいいから。・・・先生の傍にいたいの」


「・・・」


「塾に入ってからずっと好きだったの。先生のこと。・・・叶うわけないって思ってたから、ずっと告白もしなかった。でも私態度であらわしちゃうからバレバレだったんだけどね・・・笑」




寂しそうに少しだけ笑う染谷の姿を見て、俺はひなたと重ね合わせて見てしまった。



その雑念を激しく振り払う。


駄目だ。
絶対に。


染谷をひなたの代わりになんてしたら駄目だ。



「先生・・・?」


『咲夜・・・?』





何度振り払っても染谷がひなたと重なる。


「・・・くそっ」


俺は俺自身を憎みながら、そっと染谷の体を包み込んだ。


「私なら大丈夫。先生の傍にいられるなら・・・どんな関係でも」


優しく俺を抱きしめ返す染谷の手が震えていることに、俺は気付かなかった。

ただ、染谷を抱きしめながら自分の選んだ選択を悔やんでいた。



・・・俺は染谷をひなたの代わりとして受け入れることに決めたんだ。