「こちらを・・・」



丸岡さんがカバンの中から取り出したものは小さな箱。


「これは?」


「婚約指輪になります」


「・・・え!?」


「本来ならば太陽自身が渡したがっておりましたが、今は多忙な身のうえ・・・私が代わりにプロポーズをしにまいりました」


「・・・」



丸岡さんは箱を開け、中の指輪を取りだした。


そして私の左手の薬指をそっと手にとると、そこにその指輪をはめてくれた。




あまりにもぴったりすぎるその指輪。

驚きすぎて声も出なかった。




「お受けいただけますでしょうか?」


「・・・」




私はすぐに「はい」と答える事ができなかった。


だって、あの"約束"は太陽君とのものではないから。

せっかく思い出したあの綺麗な思い出。





「三井様?」


「・・・えっと」


「やはり本人でなければ答えるのなんて嫌ですよね・・・」


「あ・・・」







ふと浮かぶ太陽君の顔。


ああ、やっぱり私が好きなのは太陽君なんだ。

そう思うしかなかった。



「・・・結婚、します」


「三井様・・・!!」


「私、太陽君と結婚したいです!」




もう後戻りはできない。


・・・でも、それでいい。

だって私は別に咲夜のことなんか好きだと思ったことなんてないんだから。