俺は腕時計で時間を確認する。


針はいつの間にか夕方の5時を示していた。




夜間塾の時間が迫ってきている。

・・・でも、今この人とひなたを二人きりにしてはいけない気がした。



「あなたが三井ひなたさんですね?」


「そ、そうです。あの・・・朝比奈財閥ってことは太陽君の??」


「はい」


「た、太陽君は!!何かあったんでしょうか?私すごく心配で・・・」


「簡単に申し上げますと、つい先日うちの社長が亡くなりました」


「・・・え?」


「大黒柱を失った朝比奈財閥は一度危機に陥りましたが、社長の御子息である朝比奈太陽御子息が社長代理をしてくださってるおかげで今でも朝比奈財閥に問題はありません」





ひなたは悲しそうな顔をした。

自分の母親を失った今、太陽が親を失ったことに対しても心が痛いんだろう。



ほとんど同じ時期に亡くしたのだから。




「太陽君は・・・元気ですか?」


「・・・はっきり言わせていただきますと、大変厳しい状態が続いております。そこで一つ提案を持ってこちらにお邪魔させていただいた所存でございます」




そう言うとちらっと丸岡信司さんは俺の方を見た。


「その提案は三井ひなた様にしかあまり聞いていただきたくない内容ですので、そちらの方は席をはずしていただきたいのですが」


「あ・・・咲夜」


「・・・分かったよ。どうせこれから塾いかなきゃいけないし。何かあったら連絡しろよひなた」


「・・・分かった」





俺は嫌な予感を払いのけ、ひなたの店を後にすることにした。


「じゃあ、失礼します」


そう言い、丸岡さんとすれ違った瞬間。


丸岡さんは何故かニタリとほほ笑んだ気がした。