あたしのトナカイくん

「あっ! そ、そうだ、これっ」



言いながら戸波くんの胸板を押して少し距離を作ってから、あたしは持っていたカバンの中を探りだした。

目当ての物を見つけて、彼の前におずおずと差し出す。



「えっと、バレンタイン、です」

「え、くれんの?」

「う、うん」



昨晩がんばってラッピングした、黄色いリボンのかかった赤い箱。

それを戸波くんはうれしそうに受け取って、「ありがとう」と言ってくれた。

自惚れかもしれないけど、その表情が、アヤミちゃんのときとは、全然違った笑顔で。

あたしはそれだけで、胸の中のもやもやが簡単に消えてしまっていた。



「もしかしてこれ、手作り?」

「うん、一応……ブラウニー、なんだけど」

「やった、大好き」



そう笑ったかと思うと、戸波くんはとても自然な流れで、ちゅっとあたしの頬にキスをした。

あまりの早業に、一瞬ぽかんとしてしまって。だけどすぐに、かっと顔が熱くなった。

彼のくちびるが触れた頬を片手で抑えながら、思わず後ずさる。



「な、なななな、なにをっ」

「ふはっ、めっちゃ顔真っ赤。もっとすごいやつしたら、どーなんの?」

「やあああジリジリ近付かないでええええ!」