あたしのトナカイくん

「はー……やっと、聞けた」

「っと、となみくん、」



その“黒っぽい何か”が、戸波くんの着ている紫色のダウンジャケットだと気が付いて。

そして今自分が、その彼に抱きしめられていると理解したとたん、かーっと一気に顔が熱くなった。

戸波くんはというと、ぎゅっと強くあたしを抱きしめながら、なんだか安心したように深い息を吐いていて。

あたたかい腕の中、あたしはあわあわと、行き場のない両手をさまよわせていた。



「三多さんさー、もう、やっぱ予想以上にかわいすぎ。アヤミにヤキモチ妬いてんのとか、まるわかりだから」

「っえ、え?!」

「今日1日俺がちょっとそっけなくしてんのも、気にしてんのわかってたし。やっぱり駆け引きってしてみるもんだな」

「か、駆け引き……?」



もごもご疑問の声をあげるあたしを、戸波くんがイタズラっぽく笑いながら見下ろす。



「よく言うだろ。……押してダメなら、引いてみろって」

「──!」



彼のせりふに、思わず、ぽかんとした顔をしてしまった。

だけどすぐにまた、頬に熱が集まってくる。