あたしのトナカイくん

そうは思っても、あたしにそんなこと、口にできるはずもなくて。



「……じゃあ戸波くん、お疲れさま」

「……お疲れさま」



そんな言葉を交わした後、彼とあたしは、男女それぞれの更衣室に分かれた。

ひとりきりの更衣室で制服から私服に着替えながら、浮かびそうになる涙を必死で堪える。


……泣くな、泣くな。

あたし、泣いていいほど、がんばってない。

ただ、戸波くんに甘えていただけだ。

……だから、泣くな。

泣いちゃ、だめ──。



いつもより時間をかけて、あたしは着替えを済ませた。

少し前に、ドアの音がしたから……きっと戸波くんは、もうお友達のところに行ったのだろう。

ふぅ、と息を吐いてから、ドアノブに手をかけて。

そしてドアを開けたあたしは、思わずそのまま固まった。