「ごめんねみーちゃん。このうさぎさんはお兄ちゃんのペットだから、あげられないんだよ」

「ッ??!」

「うさぎさん、おにーちゃんのなの?」

「そうそう、俺のなの」



動揺しているあたしを差し置き、だからごめんね?ともう1度首をかしげながら彼が言うと、女の子はしぶしぶといった様子であたしの手を放した。

そして彼はしょんぼりしているその子の目の前に、スラックスのポケットから何かを取り出す。



「うさぎさんはあげられないけど、お詫びにこれをあげる。お友達には内緒だよ?」

「わっ、いちごのアメちゃんだ!! おにーちゃん、ありがとう!!」

「よしよし、ちゃんとお礼言えてえらいねー」



すみません、とお辞儀するお母さんに、「いえいえ」と返しながら彼は女の子の頭を撫でた。

女の子はまたうれしそうに笑い、お母さんに連れられて「うさぎさんとおにーちゃん、バイバイー!」と片手をあげつつ去っていく。

そしてそんなふたりをにこやかに見送る彼の後ろ姿を、あたしは着ぐるみの中から、信じられない思いで見つめていた。



* * *