張り詰める空気。

吉田の殺気によって、息をする事すら困難に思えてくる。

そんな中で。

「参る!」

吉田は再び踏み込んできた!

横薙ぎの斬撃!

更に袈裟掛け、逆袈裟と斬撃を放つ!

僕は吉田の刃をかわす事で精一杯だ。

反撃などする余裕はどこにもない。

なのに、こんな時に限って。

「…ごほっ…!!」

突然、僕は咳き込んでしまっていた。

「ごほっ…ごほっ…ごほっ…!!」

苦しい、息が出来ない。

刺客を目の前にしているというのに、これでは…!

「もらったぞ、沖田総司!!」

吉田が刀を振り上げる!!

僕は覚悟を決めた。

しかしその時。

「やめてぇっ!!」

僕を庇うように、奈津美さんが吉田の前に立った。

「な…奈津美さ…ごほっ!!」

いけない、早く逃げて…!!

言葉に出来ないまま、僕は奈津美さんに視線を送るしかない。

「…ほぅ…」

剣を止めたまま、吉田は奈津美さんを見ていた。

「面白い…戯言を思いついた」