「どうしたの?」


眉を顰め、達也が訝る。
淋しそうな目をして。


「朝ご飯…作らなきゃ」


俯き、作り笑いをする私の腰に達也の逞しい両腕がそっと廻される。



「朝ご飯はよしみでいいよ」


矛盾してる、と思う。

さっき、このパンを手渡した時、
『まだ、温かいぞ』
と言っていたのに。

完全に冷え切らないうちに、食べよう、という意味ではなかったのか。


甘い囁きには、勝てるわけがない。


私の身体の奥は、とっくに反応を始めている。



「よしみ、痩せたんじゃない?」


いつもの愛撫なのに、冷たく感じる。
甘い囁き。


「そんなことない…」


冷蔵庫から出したまま、仕舞いもしない袋にはいったままの安売りのウインナー。


テーブルに置かれたフランスパンは、いつまでも切られることがない。



雨と風は段々に強くなって、時々ガラスにパラパラと強く打ち付ける音がした。