「バル…?ああ、ドレッシング。
酸っぱいですね」


羅夢は投げやりに答える。さっきから10分以上自分のスマホをいじっていた。


「何やってるの?ライン?」


一人取り残された私は、質問を発する。


羅夢は、ツイッターをしている、と答えた。

めっちゃ面白いっすよ、水村さんもやればいいのにぃ、などとスマホから目を離さずに言った。


目の前に年上の女がいるのに、自分の世界に勝手に閉じこもる神経が私には分からない。


羅夢が自分の時間を無駄に消費するのは、勝手だ。


だが、今は一緒にいるのだから、この空間を共有すべきじゃないのか……なぜ、羅夢がスパ『サリア』に私を誘ったのか意味がわからない。

しかし、そんなことで彼女に腹を立てたりするのは無駄だと私は分かっている。

無神経なのは、この子の特長なのだから。


2年前のこと。


私の勤務先に中途採用された羅夢は、朝のロッカールームで私に声を掛けてきた。


『笹木です。今日、初日なんです。緊張しますぅ』

『そうなの。こちらこそよろしくお願いします』


そういいながら、ブラウスのボタンをはずす私の視界に飛び込んできたもの。