「え?な、何ですか?聞こえな」

「……恥ずかしいんですよ?」

「……えぇ?」


惣介さんがぼそっと溢した言葉の意味がわからなくて、私は首を傾げて惣介さんのことを見る。

その表情はその言葉の通り、恥ずかしそうなもので。

……私はただ、その表情をもっとちゃんと見たいだけなのに。

何が恥ずかしいんだろうか?

メガネ生活をしたことのない私には全くわからない気持ちなんだけど。


「……ようで」

「はい?」


また聞こえないくらいの声で呟く惣介さんに、私はずいずいっと近付き、手を耳の横に当てて惣介さんの方に向ける。

それはまるで、耳が遠くなってしまったおばあちゃんのような仕草だろう。


「だから……メガネを外すのって……裸を見られているようで、恥ずかしいんです」

「……裸、ですか」

「だから……誘われてる、って思ったんです。……脱げ、と言われてるのと同じ意味だと。」

「!!!」

「いや……、俺は構わないんですけど」

「!!!」


何が構わないんですかっ!?、と私は口をぱくぱくさせて伝える。

……声にならない声ってやつだ。


「……どうしますか?」

「!い、いや、あの……っ」


惣介さんと想いが通じ合って約1ヶ月。

休みのたびに惣介さんのお家にお呼ばれして(寒いからと車でのお迎え付き!)、惣介さんの部屋にいる自分に少し慣れてきた気はする。

けど……一般的に遅いのか普通なのかはわからないけど、部屋に二人きりでいる時間が長いにも関わらず、私たちはキス止まりで。

つまり、そういうことは……してない。

もちろん惣介さんのことが大好きだし触れたいとは思うけど、そういう雰囲気になることもないし、だからと言って……だし。

それに惣介さんにはそういう気がなさそうというか。

……そう思わせる“女の魅力”ってやつが私にないのかもしれない、と最近少し思うようになってたりもするんだけど。