「っ!」

「……本当はマーキング、です。」

「……え?マーキング……ですか?」

「はい」


マーキングって、野生動物が自分の陣地だという印をつけることだよね?

……私が惣介さんの陣地……って、どういうことだろう?

首を傾げると。


「……他の男といる時でも、琴音さんに俺のことを思い出させるための、マーキングです。」

「!!」


惣介さんから飛び出してきた爆弾とも言える発言に、私は何も言えない。

つまり……私が惣介さん以外の他の人を見ないように、ってこと……?


「自分でもバカなことしてるって思うけど……そうしたいって思わせるのは、琴音さんなんです」

「!」

「……やっぱり引きましたか?」


惣介さんは不安そうな表情を浮かべるけど……引くなんてとんでもなくて。

そんな風に思ってもらえていたなんて、嬉しくて仕方がない。

もしかしたら惣介さんも私と同じ気持ちを持っているのかも、って自惚れそうになる。

……自惚れてもいいの?

私はゆっくりと首を横に振る。


「……引くわけないです」

「!そう、ですか。良かった」


惣介さんのホッとした表情に、私は思うままに言葉を続ける。


「……それに……惣介さんの思惑通りになってますから。……この香りを纏っているといつも、惣介さんがそばにいてくれる気がします」

「!!」

「だから、安心してください」


こんなの、告白しているようなものだけど……伝えたいと思った。

素直な言葉を。



……そして、素直に。

私は惣介さんのことが好きだって気付いた。

触れてハッキリと気付くなんて単純すぎるけど……

でも、もっと触れたい、もっと心の中を知りたい、と思ってしまうこの気持ちは確実に……

“恋”だ。