「今日、なんかあったの」
「へ。な、なんで」
修ちゃんの鋭い指摘に、笑い声はピタリと止んで、急に冷や汗が湧いてきた。
美香さんと会ったことを悟られないよう窓ガラスへ視線を持っていった。
大丈夫、修ちゃんは知らないはず。
車内ではさっきから修ちゃんと私が大好きなロックバンドの曲が流れている。
「バイト先まで来ることはあっても終わりまで待ったことはないじゃん」
「本当になんもないよっ。しゅーちゃんに会いたいから待ってたの!」
「……」
あ、ち、直球すぎたかな。
ーカァアー
つい出た本音に顔が熱くなる。
しゅーちゃんは黙ったまま青になった信号を前にアクセルを踏む。
「なんだそれ、犬か」
「、」
ふっと息を含んだ言葉。
修ちゃんは前を向いたまま
やるせない様に笑っていた。
心臓が、キューッと狭まっていく。