「おはよう」


廊下に出、そこを歩いていたハナに挨拶をする。

ハナもこの春からは年長クラスだ。

黄色い通園バッグが恥ずかしいらしく、持って行くの行かないので、毎朝、ケンカしている。


「おはよう。お兄ちゃん」


ハナはもう「アチラ」とは言わない。

昨年、シズカさんが帰ってきたのと同時に、言うのを止めた。

僕としては舌足らずな「アチラ」は可愛くて仕方がなかったのだが、ハナも段々と成長しているのだろう。

嬉しいような、寂しいような気分になる。


「ハナ、今日はお兄ちゃんと幼稚園行こうな」

「え〜」


僕がハナを幼稚園に送っていくことは、これで最後。

それだって、かなり久しぶりだ。

そして、今日は僕の卒業式。

この町を離れる僕が、ハナを送って行く事は、もう、きっと、ない。