壁には、制服のブレザーが、珍しくハンガーに掛けられている。 肘のあたりは頬杖をつく癖のせいで型崩れし、何度も擦れ、くたびれてしまった生地が朝日にテカテカと光っている。 僕が3年間着ていた服。 柊と下校した制服。 ハナを迎えに行ったブレザー。 少しだけ寒さに震えながらカッターシャツに袖を通す。 糊の効きすぎたシャツに包まれながら、そのゴワゴワとした居心地の悪さを心から楽しむ。 僕ら三人だった時は、『シャツに糊』なんて知恵はなかったからだ。