「ウシシシ」

「ん?」

「ツムジ、いただき!」


柊は僕の後ろに周り、僕のつむじを押した。

そして、柔らかい重みが僕を包む。


「アキラ……お帰んなさい……」

「…………」


僕のシャツに隠れて、少しだけ柊が鼻を啜る音が聞こえる。

ある一点の湿度が増す、僕のシャツ。

僕は何も言えなくなった。

その時だった。


「ひいちゃん、『お帰んなさい』じゃなくて『いらっしゃい』でしょ?」


ハナの言葉に二人で笑った。

ハナは自分の言葉を笑われて少し怒った。

タクシーの運転手は口を開けて寝ている。

タクシーのラジオは、ソフトバンクホークスが五点差で負けていると告げた。