ハナはあれから、それなりに楽しい幼稚園生活を送っているようだ。
ケンカした男の子とも仲良くしているのを見かける。
男の子の母親のような人間とはこれからも遭遇するのだろうが、それはその時に考えていけばいい。
僕がすべきことは、ハナに出来るだけ楽しい生活を遅らせることだけ。
僕がシズカさんになることは出来ないのだから。
「ハナ、ほら、ちゃんと座ってなきゃ、電車のおじさんに怒られちゃうよ?」
僕が車掌を怖い人に見立ててそう言うと、ハナはにっこりと笑いながら座席のシートにきちんと座り直した。
以前はこう言うと、僕の方に体を寄せて本気で怖がっていたものだが、今では僕の言う冗談をきちんと冗談として理解している。
僕はその成長が嬉しく思う反面、怖がっていた頃のことをとても懐かしく感じた。