「ハナ。どうしたのかな? どうしてタッくんのお耳、引っ張っちゃったのかな?」 「…………」 相手の家に行く道すがら、僕はハナの手を引きながら尋ねる。 ハナは薄く生え揃いつつある眉毛を寄せて、とても幼児とは思えない険しい表情をし、真っ直ぐ前を見ている。 「ハナ?」 「…………」 ハナは決して理由を話そうとしない。 さっき、相手の家の住所を聞くために話した幼稚園の先生も、「ハナちゃん、どうしても理由を言ってくれない」と言っていた。