マサハルさん


「もしもし?」

「アキラか!?」


電話を掛けてきたのはマサハルさんだった。

「アキラか!?」

携帯電話でそう聞く人間の気が知れない。

持ち主以外が出る可能性は、かなり低いだろう。


「そうだよ」

「早く帰ってきてくれ!」

「どうしたの?」

「いいから!」

「わかったよ」

「それと!」

「ダメだよ」

「……俺は何も言ってないぞ!?」

「今日の分のビールはもう飲んだでしょ?」

「うおっ!」



マサハルさんの「早く帰ってきてくれ!」は、いつも大したことがない。

きっと、今日も大した用事ではないのだろう。

だけど、今は、少しほっとした気持ちになった。

僕はアイスクリームの袋を捨てると、ビールの入っているケースに向かった。