甘えるように擦り寄り、ゆっくり頷く。
「本当は今すぐ飛んで返って式を挙げたいんだけど、身体がボロボロじゃあカッコ悪いからね」
肩の脱臼の他、シャールカーンも上半身の打撲や足の腫れなどの外傷がある。
(怪我してばかりね、シャール)
ついこの前、バキータにやられて大怪我を負った。
今回は婚約を賭けての勝負。
(どっちも、私のせい…)
罪悪感によりサフィーアの表情が曇る。
「どうした?サフィーア」
落ち込んでいる様子に気づき優しく問うも、サフィーアは顔を伏せて首を振るばかり。
そんな彼女を見て、しばし沈黙した後、シャールカーンは徐に歌い出した。
「あなたを、思うたび
我が心は
砕かれて、揺られて
千々とはなりぬ」
行き場のない恋心は貴女を想って苦しむ。
「心の渇きを、癒す君よ
その輝く眼(マナコ)に
私を映してくれ
愛しさ募る
永久(トワ)に、切なくて」
貴女こそ全て。
永遠に満たされぬ心よ。
「もしも千の夜があなたを
隠そうとも
この心は、永遠に
あなたに捧ぐ
夜明けを待ち続け」
貴女との出会いは奇跡。
また巡り会える時を待ち続ける。
たとえそれが、千年後であろうとも。



