砂漠の夜の幻想奇談


これを合図に子分達が一斉に襲い掛かる。

「殺った!」お頭はそう思った。

しかし――。



「ぎゃあ!!!!」

「ぐああっ!!!」

情けない悲鳴を上げて切り刻まれたのは仲間の方だった。

バタバタと床に倒れていく彼らを呆然と見つめながら青くなる。

自分も殺される。

そう直感で感じ取った彼は少女を放り出して逃げ出した。


「おっと、俺のお姫様に乱暴はやめてくれ」

投げ出された少女を抱き留めた青年は、一目散に玄関へ走る男の後を追った。


「待ちなよ」

青年は瞬間移動でもしたのだろうか。

必死に走っていた男の前方に少女を抱えたまま忽然と現れた。

「なっ!?てめぇ、さっきまで後ろに…!」

ありえない速さ。

人間技ではない。

ここで男は思い出した。


「ぼ、亡霊…!?」