(また、この歌だわ…)

彼は子守唄と言っていた。

よく口ずさむということは、深い思い入れでもあるのだろうか。

聴いたばかりのメロディーを心の中で繰り返していると、シャールカーンが背を向けたまま話し出した。


「俺の母上は、政略結婚でこの国に来たんだ。そして、恋を知らない乙女のまま…俺を身篭った」

優しい噴水の水音とシャールカーンの甘やかな声。

闇夜は静寂を守り、星々は瞬き、この刹那の記憶を秘密裏に刻み込む。


「そんな母上が、俺にはまともな恋愛をしてほしくて教えて下さった歌がこれなんだよ」

彼はゆっくりと振り返った。

その先に捉えた少女の清んだ瞳が綺麗で、彼女の存在そのものが神秘的で、思わず手を伸ばす。