無茶言うなよ

彼女の震える瞳が、じっと見つめてくる。

わざと強がってるみたいで、すごくさみしげに見えた。

辺りが暗いから、余計。

当ててよって言われても、俺は男だし、女心なんてわかんねぇし……

だいたいそんな顔されたら、どうしたらいいか、思考が停止するじゃないか。

どこの世界に、好きな女の子が唇噛み締めてるの見て、平気でいられる男がいんだよ!!

「もうっ、わかんねぇ!!」

「わ!?」

だから俺は、彼女を勢いよく、抱き締めた。

彼女の鞄がアスファルトを打つのと一緒に、その体が、俺と接する。

俺は、彼女の体をしっかり、しっかりしっかり、抱き締めた。