無茶言うなよ

ところが、あとほんのちょっとってところで突然、向こうのほうから車のライトが――

バスがやって来た。

なんっつうタイミングだよ!? って思った時には、彼女が音に気付いて、ハッと俺から離れた。

俺達は、またお互いの間に、一歩分の距離を空けた。

だけど、

「もう。のろま」

「っな、るっせーなぁ」

やれやれって頭を振る彼女を見て、心の距離は、縮まったんじゃないかと思った。

綺麗でかわいい彼女が、バスに乗る。

お尻が、スカートが、目の前で揺れた。

そのあとに続きながら俺は、次こそはキスだってと、と思った。



そして虫がジィジィと鳴く夜、バスはゆっくり、発車した。