多分、幸樹は言いたくても言えなかったんだと思う。 許嫁(イイナズケ)がいるのに、よりにもよって農家の娘を好きになってしまったなんて。 俺は昨日の夜の、絢芽姫の話を思い出した。 このままで、俺は良いのか。 幸樹も絢芽姫も、幸せにはなれない!そうわかっていて、俺はそのまま見過ごすのか…。 急に、じっとしてはいられなくなり、城を飛び出した。 晴れてても傘をささなきゃ濡れる事は、わかっている。