「…っ」 唇をぎゅっと噛みしめる。 すると、ふわっと私の両頬を包み込むように、彼の手が触れる。 「茉莉、少しはプライドを捨てないといけない時もあるんだよ。限度がわかってないと、痛い目見るのは茉莉なんだよ?俺は茉莉が傷つくのみたくない。だから、今、言ってんの」 彼の言葉に思わず涙腺が緩む。 「…そんな目で見ないでよ」 彼は私を見て苦笑いを浮かべた。 この時の私たちはまだ、キスすらしていない関係だったのである。