あの女はどうして祈っていたんだろう……。


そう言えば、母さんもよく、祈っていた…………

毎晩、泣きながら…………



『神様、お願い……。











助けて。』







次の瞬間、俺は走る方向を変えた。



向かってくる警備員より速く、あの部屋に入った。




「……あなた、誰!?」


「このビルから出たいか?」


「……えっ……。」


殺風景な部屋の中にはテレビと本とバラの花だけがあった。



「……出たいっ…………」



「なら来い。」


俺は女の手を握り、扉に向けて鞘を構えた。



流れ込む警備員を次々となぎ倒した。



「……本当は、戦うのは得意じゃないんだ。」


「……そしたら…………」


「逃げるぞっ」



俺は女を担ぎ、窓ガラスを割って飛び降りた。




「待てぇぇ!!ミル!!」



夜の闇の中、警備員の咆哮だけが響いた。