そしてまた同じ朝。

HRが終わると、待ってましたと言わんばかりに相沢がカズの元へと走って、俺の後ろで何やらワイワイ騒いでいる。

 カズは、いいよな。相手が女の子なんだから。

こんなことを思うのはカズに悪いってわかってるけど、でも、悔しい。


「あ、ねぇ、星崎君も一緒に行こうよ!」

 ぼーっとしてた俺の肩を痛いほど叩きながら、相沢が叫んだ。

 何のことだかいまいちよくわからない。

「今度ね、カズっちと駅前のクレープ食べに行くんだけど、一緒にどう?」

 早口でそんなことを言われて、カズの顔を見た。

 普段のカズと変わらない表情だけど、俺は知ってる。だから。


「いや、俺は遠慮するよ。甘いのあんま好きじゃないし。」

「そうなのか?」

 相沢から返答が来る前に、カズに切り出されて、少し状況が悪くなる。

「嫌いじゃないけど、進んでは食べないよ。」

 ちょっと嘘をついて、反抗した。

不服そうな表情の相沢を横目に、また俺は前に向き直った。

 邪魔しちゃいけない。せっかく二人きりになれるチャンスなんだから。

 もし俺と祐也がどこかに一緒に行けるとしたなら。

きっとそこには他の誰かにはいて欲しくない。誰にも邪魔されないで一緒に痛いって思うんだろう、きっと。


 そんなことがないから、想像出来ないだけで。


 しばらく俺の後ろで騒いでいた相沢が、チャイムの音で席に戻った。

それを確認している途中で、後ろからカズに背中をつつかれて振り返った。

 小さく両手を合わせて万弁の笑みを浮かべるカズの額を、人差し指でつついて、また、俺は前に向き直ったのだった。