「声おっきいよ…もお。いいの、彼氏なんて、いるだけ邪魔だし」

 言うと、また電話をさっきの通りに耳に当て直した。

 君は彼氏がいらないんじゃなくて、怖い、んだよね。
僕は知ってる。去年の秋に付き合ってた彼氏に二股かけられてて、それを知った君は2日も学校を休んで、ずっとベッドに突っ伏して泣いてた。
 悲しい顔ばかりの毎日は僕だって苦痛だった。
 だから、出来ることなら僕も君に彼氏なんて作って欲しく、ないよ。

 ないけど。

 でも、もしその中野君っていう人だったら君を嬉しい気持ちにさせられるなら。

 …って。

 僕が思ったところで、結局君にそんな思いは届かないんだけど。
それでも、去年の秋に見た、彼氏と付き合い始めた時の君の笑顔は眩しくてキラキラしててとても嬉しそうだったから。

 僕はもう一度その笑顔が見たいから。

 心の中でだけ何度も何度も、祈った。