ふいに、冷たい風が吹き付ける。

…寒っ。
って、そうだ、仕事やらないと。


なんか、長いことここに居たような気分だ。

ていうか。


「あいつら、せめてなんかやってんだろうな…」


生徒会主催行事の資料制作、丸々放っておくってアホか。

冷えた手を擦りながら生徒会室に向かおうとすると、首筋に熱すぎるほどの熱を感じて飛び退いた。


「あっつ…おい、何」

しまった。
とっさのことで、つい不機嫌な顔を晒してしまった。

と、怯んだのもつかの間。


「資料制作なら、後輩たちが頑張って終わらせてたよ。」


「…副会長。」

後ろに立っていたのは、たくさんの缶を抱えた馴染みの顔だった。


「会長はそんな顔もするんだねぇ。」

「そりゃ、びっくりするでしょう。
…なにそれ、缶コーヒー?」

「そう。頑張ってくれたからね、ご褒美あげようと思って。」

そうか。あいつら、頑張ってたのか。


「相変わらず後輩に甘いね、副会長は。」

「会長がムチ与えすぎだから、私がアメ担当なだけだよ。会長もおひとつどうぞ。」

缶コーヒーは、久々に飲むな。


「…ありがとう。」

「はいよー。」

温かくて、なんかほっとする味になんとなく懐かしさを感じる。


「…上手いな。」

「ふふ、缶コーヒーだけどね。」

「上手いよ。」

「そっか。」

「帰ったらちゃんと誉めてあげてね。
彼ら、会長に認めてほしくて必死なんだから。」

「…ああ。分かってる。」


突き抜けるような寒い風が吹いても、さっきまでのことが嘘のように、穏やかな気持ちだった。

俺も、前を向こう。


水野さん、ありがとう。


そして、さようなら、

「      」






END