「やっぱ、ここにいたっ…」


私は昂の声に振り向くことができず、明かりの灯る街を静かに見下ろした。

息を整えながら、昂は私のとなりに並んで同じように街を眺めた。


「…」

「…」


無言。
私が何かを言うのを待つのでもなく、心地いい、昔から知っている感覚に、私は心底安心していた。

さっきまで、来てほしくないとか自分勝手なこと考えてたくせに。

本当に私は、どうしようもない。



真っ暗な空に星が瞬き出すように、街はキラキラと輝きを増していく。
ぼうっと眺めていると、頬に熱いくらいの暖かさを感じて思わず昂の方を見る。

「ん。」


渡されたのは、缶のミルクティーだった。


「あり、がと」

「おう。」


久々に交わした言葉は少しだけぎこちなかったけど、なんだか心が満たされる。

それに、このミルクティーは。