「・・・びびった」
頭上から、低い声が雨のように降り落ちた。
このボー読み口調は・・・
「ああ、やっぱり加藤か」
私を覆う、大きな影。
そこには私の『好きな人』が立っていた。
「やっぱりって何」
「いや、べつに」
「・・・つか、こんなとこでなにしてんの」
「雨宿りしてる」
「傘持ってねーの」
「持ってるけど、なんとなく」
怪訝そうな顔で、はぁ、と小さく溜め息をついた。
マフラーの隙間からは、白い息がふわりと漂っている。
加藤は靴を履き替えて、平然と私の横に並んだ。
加藤と、二人きり。
本来なら、どきどきしてもおかしくないシチュエーションだ。
けど・・・・・
「一緒に帰るか」
「え、」
「馬鹿、冗談だよ」
なんだソレ。
まぁでも、言うと思った。
ちょっと、びっくりしてしまったじゃないか。
「加藤って、なに考えてるんだか分かんないよね」
「お前もな」
ザー・・・
「やまねー」
「傘は?」
「持ってるわけねーだろ」
いや。
知らないし。

