何処とも知れない暗闇を、ひとり歩く少女がいた。薄手のロンTに擦りきれたジーパンの、ポニーテイルに結わえたその少女は、ひとり暗闇を進む。


「……zephyr……薺……」


何処かからか少女を呼ぶ声が響く。少女は少し立ち止まるが、やがて再び歩み出した。


「ゼ……お姉ちゃん・・・っ」


先程とは違う、鈴を鳴らしたような、けれど芯の通った声が少女を立ち止まらせる。


「私だよ、zephyr(お姉ちゃん)。気付いて……」


泣きそうな声は段々と近付き、やがてひとりの少女が姿を表した。純白のワンピースに身を包み、ツインテイルに結わえた髪を胸の方へ垂らした少女は、真っ直ぐに此方を見詰める。



「・・・探したよ、薺お姉ちゃん」


「……quote」


「違うよ。今は、菘」


菘はゆっくり首を振ると薺の側へ近付き頬を舐めた。仔犬のように舐める菘を薺は抱き寄せる。


「…す、ずな……」


「何、お姉ちゃん」


沈黙が訪れ、ふたりは見詰め合う。やがてどちらともなく唇を寄せ互いの唇を吸った。