めずらしいな、とは思っていた。



「……沖田主任、今日だいぶ飲んでるよな」



ごちゃごちゃと、騒がしい居酒屋。その個室になっている小上がりで、隣りに座っていた同期の高津が、抑えた声音で耳打ちしてきた。

個室の上座、自分たちから少し離れたところには、ここに集まっているメンバーの中で、1番偉い上司が座っている。

そこに視線をやりながら、「そうね、」とみちるはうなずいた。



「いつもより、明らかにペース早いわね。……今何杯目?」

「俺の見てる限り、もう5杯はいったと思うけど」

「そう……」



こんな場面でも、上司である沖田のことを気にかけてしまうのは、オフィスで彼のサポート役のようなことをしているからだろうか。

今日のこの集まりは、大きなプロジェクトが無事済んだことに対しての、慰労会のようなものだ。

だからこの場には、プロジェクトチームメンバーの8名しかいない。

その中で紅一点のみちるは、メンバーから何かと頼られる、いわば“お姉さん”のような立ち位置で。

もちろん、まだ20代半ばという彼女より、年上の男の方が多いのだけど。