「想像以上の眺めだな」



自分の目の前で、口元に笑みを浮かべながらそんなことを言う男に。

みちるは心の中の動揺を悟られないよう、冷たい一瞥をくれてやった。



「……主任。これは、どういうご冗談ですか?」

「どうもこうも。これで俺と君も、ただの男と女だということだよ」



普段よりも、どこか浮ついた瞳で自分を見下ろしてくる上司を、無言で睨みつける。

そう、文字通り、すぐ“目の前”にいる男を。


みちるは内心冷や汗をかきながら、ちらりと、冷たい床に拘束された自分の右手を見て。

この状況──上司の自宅で、なぜかその上司によって床に押し倒されているというありえない状況──に至るまでの経緯を、思い起こした。