「あ」
エンジンを止めて、鮫島がしまった、という顔をした。
「俺、環ちゃんに詳細なにも言うてへんな」
苦笑を浮かべる。
その顔を横目に見ながら、わたしは熱で掠れた声を絞り出す。
「べつに。もし国昭おっちゃんがおんねやったら、本人から直接ワケ聞いた方が早いわ」
心なしか悪寒がする。
そうだ、今、インフルエンザでへたっているときなのに、どうしてこんなことに。
ため息をついたわたしの腕をとって、安崎が満足そうに頷いた。
「話が早い嬢ちゃんでよかったわ。叔父ちゃんも喜ぶやろうなぁ、こんなええ子が」
「ヤス!」
「おっと」
鮫島の怒号に、安崎が慌てて口を閉ざす。
ぼんやりとしてきた意識の中で、それがどう言う意味を持つのか、考えてもわからない。
最早思考回路はとざされたといえる。
鮫島が先頭を歩き、その後ろをわたしが、背後には安崎が連なって廊下を進んでいく。
時折すれ違う強面のお兄さん達が「おう、帰ったんか」とか「兎は逃げへんかったようやな」とか口々に声を掛けてくるが、鮫島も安崎も微笑むばかりで会話が成立していなかった。
