「ごめんな、あいつ、ほんまはええやつやねんけど短気やねん。環ちゃんは、そんなことないやろ?」
「短気ではない」
「ほな、行こう。道中でじっくりことこと事情説明したるさかい」
「……煮込まれんのいやや」
「親戚やろ」
「付き合いないもん」
「まぁま、そんなこと言わずにおいで。あんまりしつこいと俺もどうなるかわからへんで」
依然として掴まれている腕に、ぎゅう、と力が入ってきて、思わず顔をしかめた。
痛いのは嫌だし、怒られるのも理不尽極まりない。
それに、付き合いがないとはいえ、国明叔父さんは母の兄だ。
親戚なのには変わりない。
4つ下の従兄弟、国明叔父さんの息子もいることを知っている。
どこに連れて行かされるのかわからない。
そこで待っているのは拷問かもしれない。
怖い。
「環ちゃん」
鮫島が優しく問いかける。
行くよね?
ほら、行こう。
その先にはきっと、良いことなんてひとつもない。
断れば良かったんだ。
行かないと、どこにも、国昭叔父さんのことを無視しておけば、こんなことにはならずにすんだかもしれない。
身近な、最愛の人を、失わずにすんだかもしれないのに。
でも、自らの親戚を無下にできない。
母親の兄なのだ。
曲がりなりにも、たとえ少しだけだとしても血は繋がっている。
無視できるはずがなかった。
「……行きます」
「それでこそ環ちゃん。ロビーにヤスが車用意してるはずやから」
「はい」
