にっこりと微笑む、その人は、性別も体型もほのかとは程遠い。
ツーブロックマッシュヘアとほりの深い目元には見覚えがあった。
白いスーツを今も着ている。
「……あの」
「うん。怖がることあれへんよ。俺は鮫島って言います。こっちは……」
そう言って鮫島がうしろを振り向く。
彼に隠れていたのだろう、小柄な青年がひょっこりと顔をのぞかせた。
「こんにちはー、俺、安崎言います。よろしゅうな」
見ず知らずの安崎と鮫島が、人懐こい笑顔を振りまく。
そう名乗られても、どう返事すればいいのかわからなかったわたしは、とりあえず軽く会釈をしておいた。
奥で「この家ガス通ってへんのんちゃうん」と未だにボヤく真奈実の声が聞こえる。
汗が冷たい風にさらされて、ぶるりと身震いする。
白いスーツのジャケットを脱いだ鮫島が、それを手渡そうとしてきたけれど、手で遠慮の断りをいれた。
それよりも、ほのかがいつ来るかわからない。
早く帰っていただこう。
「あの、ごめんなさい。きっと人違いやと思います。お隣さんと間違えたんとちゃいますかね」
「ううん、そんなことないよ」
鮫島の笑顔は絶えない。
「だって、君、鮎川国昭の親戚やん」
人懐こかったはずの犬が、狩りの本能に目覚めたような鋭い目つきで、獲物をみおろす。
