「げっほ、げほっ」
「あー、立派なインフルエンザですね」
「…………」
にこり。
内科の医師が、マスクの下で咳き込むわたしを同情の目で見る。
掠れた声で「あざました」と言うと、颯爽と診察室を出た。
待合室のソファに座る母が、どうだった、と暗に訴える。
「インフル」
「おめでとう」
「…………」
にこり。
彼女は、一週間も学校休みやないの、ラッキーやん、とはしゃいでいるがその真相は目に見えてわかっている。
「言うとくけど、熱あるからな。仕事行くんはええけど、まっすぐ帰ってきてや。ご飯なんか作っとられんで」
「えぇ~?」
ほらね。
あからさまに不機嫌な声を出した母は、眉間にシワを寄せて睨んできた。
最低でも一週間は家に居るから、わたしに家事をしてもらってその間に、母はきっと友達とディナーにでも行こうという魂胆だ。
まったく、娘が9度近い熱を出しているのに、何を考えているのか。
家に帰ってきてから、未だ冷える手を擦りあわせて布団にもぐる。
さむい。
今の時間は、簿記の授業中だ。
2年の時に比べて、授業数が減った科目。
大柴が、黒板の前でノートを広げながら、授業を勧めていく様子が目に浮かぶ。
