「そう言ってもらえるとありがたいわ。今回はホントにあんたを見直したわ」

「おいおい、大袈裟な言い方するなよ」

 初谷は照れながらも悪い気はしない。

「それから、時々でいいからあの子に会わせてくれよ。俺は本当の父親なんだしさ。お前が望むなら養育費だって少しは出してやってもいいんだぜ」

「結構よ。あんたから施しを受けるつもりはないの。子どもを認知していないなら父親ぶる権利はないのよ。でも、そうね、理香の前で芸能界の話を出さないなら、会わせてやってもいいわよ。今回の借りもあるしね」

「マジで? そいつはうれしいな」

「意外だわ。あんた、あの子に父親としての愛情が湧いてるんだ」

「うん、そりゃぁまあな」

 理香に対する責任感と、彼女の通う花嫁女学園に対する興味が半々くらいだというのが本音だが、まあそういうことにしておこう。時々理香と食事でもして、あの学校の話を聞こうではないか。

 元恋人で理香の母親も、あの時事務所から忽然と姿を消さなかったら、芸能界で良い女優になっていたはずだ。彼女には華があった。あの時、彼女が孕んでいることを知っていたら、自分はどうしていただろうか。

 初谷は首を振った。過ぎ去った過去を振り返って「もしも」のことを考えるのは詮無いことだ。大事なのは今彼に何ができるかを考えることなのだ。


最終章に続く。