ムカつく。
なんでこいつ、こんな危機感ないの?
それとも俺を妬かせたくて、わざとやっ
てんの?……って、そりゃないか。
美姫の傍へと行き、美姫を揺すり起こす
。
「美姫、おい、起きろ」
「ん~……?」
モゾモゾと動きながら、ゆっくりと瞼を
開く美姫。
とろん、と潤んだ瞳で見つめられて、心
臓が大袈裟に跳ねたのがわかった。
「あれぇ……山田君~……?」
「……帰るぞ」
山田君だぁ~、なんて言いながら、俺の
頬をペタペタと触ってくる美姫を抱き上
げる。
「邪魔したな」
帰り際、俺は男にそう言って、アパート
を出てきた。
「……よっ、と…」


