教えられた、というか一方的に言い付け
られた住所まで車で向かうと、そこには
アパートがあった。
車から降りると不意に、壁に凭れるよう
にして、一人の男が立っていた。
暗闇でもわかるくらい整った顔。
直感的に、電話をしてきたのはこの男だ
、と思った。
男は俺に気付くと、「あんたが美姫の彼
氏?」と訊いてきた。
呼び捨てしてんなよ、と苛つきながら頷
く。
「あんたの彼女、酔うと甘えたになんの
な。人懐こい猫みてー」
喉の奥をクツクツと震わせて笑うソイツ
を睨み付ける。
確かに美姫は、酒を飲むといつもよりも
甘えん坊になって、めちゃくちゃ可愛い
。
だけどそんな姿、誰にも見せたくなんて
無いし、共感なんか求めてない。
「……いいから美姫を返せよ」
「おー怖。わかったって。こっち来て」
そう言って歩き出した男の後をついてい
き、ソイツの部屋だと思われる部屋に入
ると、美姫が気持ちよさげに眠っていた
。
……無防備な寝顔晒しやがって。


