そう言って手を引かれて、着いたのは、
湧き出る泉だった。



「ここに扉が……?」

「そう。あとは呪文を唱えるだけ」



山田君はそう言うと、ゆっくりと目を瞑
った。



そして、山田君の形の良い唇が開かれた
瞬間、私は。



「やっぱり駄目!」



山田君の口を、両手で覆っていた。



驚いたように目を見開く山田君。



「山田君……こ、こんなのやっぱり駄目
だよ。駆け落ちなんて……」

「…俺と日本に行くのがそんなに嫌?」



私の手を剥がした山田君が、いつもより
低い声で呟く。



そうじゃない。そうじゃないけど。



「ここで帰ったら、一生お父さんに認め
てもらえないんだよ?」

「俺は別に──」

「そんなの、駄目」